洋楽で驚いた時代の話

かつて洋楽には「驚き」があった…

#5「フレディー・マーキュリーの美意識」〜映画「ボヘミアン・ラプソディー」に寄せて

映画「ボヘミアン・ラプソディー」が記録的な大ヒットを続けている。

https://www.google.co.jp/amp/s/eiga.com/amp/news/20181217/11/

https://www.google.co.jp/amp/s/rockinon.com/blog/kojima/182139.amp

 私も観てきたが、自分のようなクイーンをリアルタイムで知っている人間にとっては、とても面白くしかも感動せずにはいられない映画だ。

しかしその後の、ここ日本での驚くべき大ヒット現象は、私にはまったく予想ができなかったものだった。

なぜなら今までこういう音楽映画というのは、たいてい私のような一部の洋楽ファンしか観ないものだったので、この作品もそういうものだと思っていた。

 

これは明らかにクイーンを知らない世代にまで、この映画でフレディー・マーキュリーやクイーンの魅力が伝わったという事だろう。

 

この映画の魅力は、映画館の大音響で聴いた時のクイーンの楽曲の素晴らしさと共に、なんといってもフレディー・マーキュリーという人間の人間的な魅力を描いた点にあるだろう。

 

私がクイーンを知ったのは洋楽を聴き始めてすぐの頃の19781979年頃だったので、すでに「ボヘミアン・ラプソディー」「伝説のチャンピオン」といった名曲を発表した数年後だったものの、その頃というのは、他にもイーグルスレッド・ツェッペリンピンク・フロイドフリートウッド・マックウィングスといった大物グループが現役だった事もあって、まだまだクイーンというグループは、イギリスや日本ではすごく人気はあったものの、アメリカではそんなに重要視されていない中堅のグループといった印象だった。

 

日本ではデビューして早い時期から、やたらに女の子達には人気があって、「ミュージックライフ」のような音楽グラビア誌によく取り上げられていたアイドルグループの印象が強かった。ちょうど今で言うBTSのような。

 

私は、その派手派手しい王子様風のルックスや、いつもワンパターンな仰々しい大袈裟なサウンドの曲に、どこか醒めていたというか、ばかにしていたというか、そんな感じだった。

 

だから1975年の暮れに発売されていた「ボヘミアン・ラプソディー」にしても、当時の世間的には、まだまだ私のようにばかにする人が多かったと思う。なんなんだ?この大袈裟な曲は?と。

 

だから、現在のように多くの評論家や多くの男性が大絶賛している状況というのは、当時ではとても考えられないものだった。

 

そして、その「ボヘミアン・~」の後もクイーンは、出す曲、出す曲、ワンパターンで大袈裟な曲ばかり。

「伝説のチャンピオン」に「ウィー・ウィル・ロック・ユー」。タイトルも大袈裟だ。

自転車のベルがチリンチリンと鳴った後、やっぱり大袈裟なサウンドになる「バイシクル・レース」とか「ファット・ ボトムド・ガールズ」とか、なんかダサいような変な曲ばかり出すグループだなぁ、と思っていた。

 

それにフレディー・マーキュリーの歌う時の衣装といったら、いつも半裸みたいなピターっとした体にフィットした感じのものばかり。


Queen - We Are The Champions (Official Video)

あと気になったのは、どうしてフレディーはマイクを普通のマイクを使わず、かといってスタンドマイクも使わず、スタンドマイクを抜いたようなのを使うのだろうと。

 

といった具合に、とにかくこのフレディーの独特の美意識というものが、当時の私にはどうにも理解不能でした。

女の子にとっては、こういうのがいいのかなぁ、なんて思っていた。

 

しかし依然としてクイーンには、イギリスの熱狂的なクイーンマニアと熱狂的な女の子ファンがついていた。

すでにイギリスでは大人気のグループになっていたが、アメリカでは中くらいの人気といった状態が何年か続いていた。

 

その状況が変わったのが、1980年に発表されたアルバム「ザ・ゲーム」だった。

このアルバムからの最初のシングルは、今までのクイーンの曲ではまったく聴いたことの無い雰囲氣の曲だった。


Queen - Crazy Little Thing Called Love (Official Video)

 「愛という名の欲望(Crazy Little Thing Called Love)」はエルヴィス・プレスリーを思わせるロカビリー風の曲で、言われなければクイーンの曲とは分からないほど今までのクイーンの曲とはかけ離れていた。

 

私も初め聴いた時はすぐにはクイーンの曲とは分からなかったし、また、これはこれで、なんでクイーンがこんな曲やるのかなぁ、とも思った。

 

しかし、この曲がアメリカで大ウケした。

初の全米ナンバーワンヒットになる。

そして、セカンドシングル「地獄へ道づれ(Another One Bites The Dust)」も大ヒットし、これも1位に。

 

突然、クイーンはアメリカでも売れ始め、それと共に世界的にもようやくクイーンのサウンドが評価され始めるようになったのだ。

 

不思議なもので、一度そうやって評価が高くなると、過去の曲も評価され始めるようになる。

人の言うこと、特に音楽評論家なんかの言う事がいかにいいかげんなものかということだ。

 

ただ、この絶頂期の頃から突然フレディーは短髪になり、口ひげも生やし始め、容姿がずいぶんと変わったのにも驚いた

 

その頃はまだ彼がゲイである事もあまり知られていなかったので、私もどうして、この容姿なのか、どうしてこのヒゲなのかなぁ、と不思議に思っていたものだ。

それに伴って、クイーンも若い女の子のアイドルという感じではなくなった。

 


Freddie Mercury Tribute : God save the Queen HQ.

 それにしても、いつもコンサートの最後に、この格好で出てこれる人って、フレディー・マーキュリーしかいないかなぁ。